フェンネル（Fennel）

「フェンネル」のご紹介

遥かな昔、人々が文明らしいものを作り出す前から食料になる植物を栽培していました。最初は麦などの穀物でしたが、次第に様々な植物を栽培するようになりました。その中で重要だったのが薬草です。「フェンネル」もその一つで、最古の栽培物と言われています。

「フェンネル」は、どんな植物？

　「フェンネル」はセリ科の宿根草です。草丈は1ｍから条件が良ければ2ｍくらいには成長します。株元は、セロリや玉ねぎに似た形をしていて、フィノッキオと言う名で野菜として利用されます。葉は細い糸の様なものがたくさんあるので、離れて見ると緑色の霞の様です。初夏の頃に花芽がつく茎が放射状に伸びて小さな黄色い花をたくさん咲かせます。秋になると対になった実が生り、縦にスジの付いた穀物の様な種子ができます。

「フェンネル」の主な産地

　「フェンネル」の原産地は、地中海沿岸から世界最大の湖であるカスピ海の西側あたりまでと言われています。現在の生産地はエジプトやインド、中国で多く栽培されています。精油の産地としては、ヨーロッパの各地で生産されていますが、フランスのコルシカ島が有名です。インドでは主にスパイスとして利用する為に栽培されています。また、中国では茴香（ういきょう）と言う生薬になります。日本には平安時代に中国から薬草として伝わり、現在でも長野県や富山県で栽培されています。

「フェンネル」の香りと特徴

　種子を使い水蒸気蒸留法によって「フェンネル」精油が抽出されています。独特の甘さのある薬草の様な香りで、中華料理の東坡肉（トンポーロー）などの香りづけに使われるスターアニスとも呼ばれる八角に似た香りがします。「フェンネル」は茴香とも呼ばれますが、八角は「フェンネル」とは全く違う植物でも香りが似ていることから大茴香と言う別名があります。この香りは精油だけでなく「フェンネル」の葉や茎など植物全体から漂うので、ハーブとしても利用されています。

「フェンネル」の使い方の例

消化器のケア

　胃腸の調子が悪い時に有効です。果実を干したものは健胃薬として漢方薬の原材料としても使われています。健胃（けんい）とは、胃もたれや消化不良を改善して健康な胃にするすることです。また、駆風（くふう）と言って腸内ガスの排出を手助けする効果もあります。精油にも同じ効果があり、お腹周りのマッサージなどで利用してください。

女性特有の不調に

　女性ホルモンに似た働きをする成分が多く含まれているので、更年期障害によるほてりやむくみの改善に使えます。また、交感神経の働きを促す効果があるので、中性脂肪の分解を早める効果も期待できます。ホルモンバランスを整える事でダイエットの効果があるとも言われています。

気持ちを落ち着ける

　鎮静作用があります。対人関係の辛さや意味のない不安感がある時などに「フェンネル」の香りを身の回りに広げてみてください。甘さのある香りが心を穏やかにしてくれます。様々な要因で眠れなくなってしまう時にも寝室に優しく香らせることで安眠を手助けしてくれます。

「フェンネル」を使用する時の注意点

女性ホルモンに似た成分があります

　エストロゲンと言う女性ホルモンと同様の働きをする成分が多く含まれています。従って妊娠中や授乳中の方は使用しないでください。また、女性ホルモン依存の病気がある方も使用しない方がよいでしょう。病状を悪化させたり、薬が効かなくなったりする可能性があります。

てんかん症の方

　神経毒性を疑われる成分があります。薬が効きすぎたり、逆に効かなくなったりすることがあります。病状を悪化させる可能性もあるので利用しないでください。

使用量に注意

　鎮静作用が強いので使用料には注意が必要です。一度に大量の精油を使用する事は無いと思いますが、極度の血圧低下を招いたり神経麻痺を起こしたりする可能性があります。薄い濃度でも十分な効果はあるので、低濃度で使用してください。また、長期間の連続使用にも注意が必要です。

「フェンネル」のまとめ

　遥かな昔は、病気になると薬になる植物を使って病状を抑えたり症状を緩和したりしていました。今では「フェンネル」だけを薬草として使うことは少なくなりましたが、草全体が食用になることから色々な使われ方をしています。葉をハーブティーやスープに使い、玉ねぎに似た見かけの根元は生のままサラダにしたり、炒め物や煮物に使ったりしています。また、種子は昔から食後の口直しに齧る習慣もあり、インド料理店のレジ横にソーンフ（ヒンドゥー語でフェンネルの意）と言う砂糖でコーティングしたものが置いてあるところもあります。余すとこなく使うことのできる「フェンネル」は、大昔の人が見つけた生活を豊かにできるアイテムのひとつと言えるでしょう。