原産地 アラビア半島紅海沿岸
科名 カンラン科
特徴 木本
抽出部位 樹脂
抽出方法 水蒸気蒸留法
成分 フラノオウデスマ-1-3-ディエン
「ミルラ」のご紹介
聖なるものに結び付けられる香りがいくつかあります。「ミルラ」もその一つで、数千年前から人々の祈りの場で厳かな雰囲気を作り出す役目を務めてきました。「ミルラ」は太陽神ラーに捧げる香りであり、キリストの誕生を祝う賢者の贈り物の一つでもありました。
「ミルラ」は、どんな植物?
カンラン科コンミフォラ属の樹木から採れる樹脂を、「ミルラ」または、没薬(もつやく)と言います。コンミフォラ属には100種以上の種類がありますが、樹脂を採り出す木は一般的にミルラノキもしくはモツヤクジュと呼ばれています。乾燥した石灰質の土地で標高の高い所に自生していて、樹高は3mくらいの低木に見える多肉植物です。幹の木肌は銀灰色でとても滑らかな手触りです。横に広がる枝には小さな棘がたくさん付き、極度に乾燥した地域で自生しているため、肉厚の小さな葉がついています。
「ミルラ」の主な産地
ミルラノキはアラビア半島とアフリカ大陸の北東部に挟まれた紅海沿岸の地域で自生しています。この地域は非常に乾燥している場所で、年間降水量は日本の梅雨に降る雨より少ない量です。インド洋とわずかな隙間で繋がっていますが、地中海とは19世紀にスエズ運河が出来上がるまでは繋がっていませんでした。紅海周辺には河川もほとんど無く、海水の塩分濃度は非常に高くなっています。しかし、川が少ない事から海水の透明度はとても高くなっていて、多くのサンゴも生息していることから世界中のダイバーに好まれる美しい海域となっています。
「ミルラ」の香りと特徴
樹脂から水蒸気蒸留法によって精油が採り出されています。甘みのある樹木系の香りで、すこし埃っぽい感じが混じります。樹脂は木の幹などが傷ついた時に分泌されますが、「ミルラ」を採るために人工的に幹に傷を付けて採取しています。粘性のある樹脂は空気に触れると固まるので、それを収穫して砕き、精油を抽出する原料としています。精油も粘性が高く、気温が下がると固まってしまう事があります。
「ミルラ」の使い方の例
静謐な雰囲気を作り出す
古来より聖なる薫香の一つに挙げられている「ミルラ」は、祈りを捧げる場に相応しい香りです。心を落ち着けて静かに過ごす時間を作り出す効果があり、瞑想やヨガの時に利用できます。なんとなく気持ちがザワザワする時にも使ってみてください。崇高な雰囲気を醸し出す香りは、気持ちの平安を取り戻してくれるでしょう。
呼吸器のケア
殺菌作用や痰を切る効果があり、乾燥させる力があるので、呼吸器系の粘液が多すぎて起こる咳や痰などの喉の不調や鼻水の手当に効果があります。胸部を軽くマッサージするとよいでしょう。また、口の中のトラブルにも有効です。口内炎のケアや歯周病の予防などに「ミルラ」をわずかに入れたうがいで活用してみてください。
お肌の再生に
殺菌作用や抗炎症作用があり、ニキビや湿疹の手当に効果があります。樹脂はその樹木が傷ついた時に傷を治す目的で分泌されます。その為、傷を治す優れた作用があり、傷痕を修復し保護する効果があります。ひび割れやあかぎれなど乾燥による手足の指のケアにも有効です。バスソルトや入浴剤で活用してください。
「ミルラ」を使用する時の注意点
妊娠中の方など
月経促進作用があるので子宮に影響を与える為、妊娠中や授乳中の方は使用を控えてください。また、月経中の方も利用しない方がよいでしょう。
産地を確認する
コンミフォラ属には多くの種類があります。また、同じ種から採れる精油でも産地によって若干の香りの差が出てきます。ラベル等で学名や産地を確認して購入するようにしてください。
粘性が高い
粘性が高く、蒸発も早いので、固まりやすい精油です。油断すると精油の瓶の蓋が開かなくなってしまうことがあります。使わない時でも時々蓋を開け閉めしてください。
「ミルラ」のまとめ
「ミルラ」を語る時、必ずと言ってよいほど示されるエピソードがあります。それは、古代エジプトの人々がファラオの復活を望んでミイラを作る時に使われた精油であると言うことです。優れた防腐作用があるので、良い状態のミイラを作ることができました。また、古代エジプトの最高神である太陽神ラーに祈りを捧げる時に薫香として神殿で焚かれていました。日の出には乳香(フランキンセンス)が焚かれ、太陽が天中にある正午には「ミルラ」(没薬)が焚かれていました。また、乳香と没薬と黄金は、イエスキリストが生まれた時に3人の賢者が贈った祝いの品と聖書に記されています。ミルラノキは成長が大変遅く、樹脂や精油が採れるようになるには数百年の時間が必要となってきます。数千年前から利用されている香りは、ゆっくりとした時間をかけて作り出されています。
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