「ユズ」のご紹介
柑橘類の中には香酸柑橘類(こうさんかんきつるい)と分類される種類の果実があります。酸味が強く生では食べない柑橘ですが、香りが良く、強い酸味は料理を引き立てることができます。すだちやかぼす、沖縄のシークワーサーなど、日本には多くの香酸柑橘類があり、「ユズ」もその一つです。
「ユズ」は、どんな植物?
ミカン科ミカン属の常緑樹です。樹高が5m以上に育ちますが、栽培されている木に関してはあまり高くはしません。枝には鋭く長い棘がたくさんありますが、品種改良によって棘のない柚子もあります。初夏に白い花が咲き、夏になると小さな緑色の実が付きます。晩秋から初冬にかけて完熟した実は黄色のでこぼこした果皮をしています。耐寒性は比較的高いのですが、岩手県が北限となっています。種子から育てると結実するまでに十数年かかるので、栽培種は接ぎ木で増やされています。
「ユズ」の主な産地
原産地は、中華人民共和国の西部、世界第三位の長さを誇る揚子江(長江)の上流域と言われています。6世紀頃の飛鳥時代には日本に伝わっていて、奈良時代には栽培されていたとの記録が残っています。生産量も消費量も日本が一番多く、各地で栽培されています。特に西日本では品種改良も行われ、ブランド化した種が多数市場に出回っています。自生地は全国で点在している場所が数か所あります。その中で山口県には国の天然記念物に指定されている柚子の自生地があり、実が熟す秋になると一面黄色になり、陽が差しているように見えます。
「ユズ」の香りと特徴
果実の皮を圧搾法、若しくは水蒸気蒸留法で精油を抽出しています。「ユズ」の皮には多くの精油分が含まれているので、冬至に入る風習の柚子湯でも精油の成分が滲出しています。果実は非常に酸味が強く苦味もありますが、香りには柔らかさがあり、優しい酸味のある香りです。どこか懐かしく優しい匂いなので、高齢者施設や病院でも利用されている香りです。柑橘類の精油につきものの光毒性を軽減するために、精油の抽出は圧搾法だけでなく新しい方法も考え出されているようです。
「ユズ」の使い方の例
落ち着きと集中
忙しさや煩わしさ、人間関係のストレスなどでイライラしてしまっている時や、いわれのない不安感に陥った時などに「ユズ」の香りを使ってみてください。心の安らぎと居心地の良さが得られるでしょう。また、大事な仕事や試験の前に使えば集中して取り組めるよう手助けができます。
身体を温める
血行を促進する作用があり、それに伴う発汗作用もあります。入浴やトリートメントで利用すると冷え性の改善やデトックスに効果があります。抗菌作用や免疫力を高める効果もあり、風邪などの予防にもつながります。また、消化器の働きを促して消化不良や食欲不振を改善してくれます。
お肌の荒れに
保湿作用があり、皮膚の新陳代謝を促す効果もあるので、手荒れや老化肌に有効です。精油を水蒸気蒸留法で抽出する時に出る副産物の芳香蒸留水を使えば、光毒性や皮膚刺激を起こす可能性が低くなります。また、頭皮のケアにも有効なので、脱毛の予防につながります。シャンプーに使ってみてください。
「ユズ」を使用する時の注意点
お肌に対して
高濃度で使用すると皮膚刺激を与える事があります。精油はその植物の成分を凝縮したものです。少しの量でも効果はあるので、低濃度で使用してください。また、光毒性の可能性があります。特に果皮を絞って抽出する圧搾法ではその可能性が高くなります。トリートメントなどで皮膚に使った後は紫外線に当たらないようにしてください。安眠効果もあるので、就寝前などで利用する事をお勧めします。香りを楽しむ芳香浴では問題ありません。
「ユズ」のまとめ
「ユズ」は千年以上前から日本にあり、多くの風習にも使われています。代表的なのが冬至に入る柚子湯です。寒さが強くなってくる時期に、風邪を引かないようにと湯船に柚子を浮かべて入浴します。また、柿と同じく「木守柚」としてすべての果実を収穫するのではなく、少し果実を木に残す風習もあります。木を守るためとか、山の神様に感謝を込めて捧げるなどの意味があります。果実は生で食べませんが、果皮、果汁、種それぞれに多様な栄養素があります。果皮はビタミンCの含有量が柑橘類の中ではトップクラスです。果汁にはクエン酸やリンゴ酸など多くの酸味成分が含まれ、消化促進などに有効です。種にはペクチンが多く、血糖値やコレステロール値を整える効果があります。他にも、最近見つけられた果皮に含まれるユズノンと言う芳香成分が脚光を浴びています。日本の日常に溶け込んでいる「ユズ」には、まだまだ秘められて可能性があるのかもしれません。