「ヤロウ」のご紹介
一緒に植えると周りの植物が元気になる草があります。雑草のように丈夫で、どこにでも生えている様な草ですが、文明の芽が出始める前の昔から人にも役立ってきた植物です。益虫も呼び寄せると言われる草が「ヤロウ」です。
「ヤロウ」は、どんな植物?
「ヤロウ」は英語名で、和名はセイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)と言います。キク科の多年草で、葉の形状がノコギリに似ていることからノコギリソウの名前が付きました。草丈は1m前後の高さになり、夏になると花芽がついた茎が伸びて先端に小さな白や薄いピンクの花が咲きます。暑さにも寒さにも強くとても丈夫で、地下茎がよく広がり、繁殖力も高くなっています。根から分泌される成分が近くに生えている植物の病気を治し、テントウムシなどの益虫を引き付けて害虫を寄せ付けない効果も持っています。
「ヤロウ」の主な産地
ヨーロッパが原産地と言われています。現在では世界中に広がり、観賞用に赤や紫色の花を咲かせる品種も作られています。イラクの北部にある洞窟遺跡には、数万年前の旧人類の墓地があります。そこではネアンデルタール人の骨と共に大量のセイヨウノコギリソウの花粉が発見され、この植物を何らかの形で利用していた痕跡と思われるようです。日本に伝わったのは明治時代に入ってからですが、強い繁殖力で現在では北海道の北部を除いて帰化状態になっています。
「ヤロウ」の香りと特徴
「ヤロウ」精油は、花や葉が付いたまま、ほぼ草全体を水蒸気蒸留法で抽出しています。ぬくもりのある薬草のような香りで、干し草のような匂いと表されることもあります。精油の色は珍しい濃い青色をしています。これは、炎症を抑える効果などがあるカマズレンと言う成分が多く含まれているせいです。この色の為、「ヤロウ・ブルー」とも呼ばれています。「ヤロウ」の香りは、ホップがビールに使われるようになる前にはビールの香り付けに使われていました。また、香りタバコの代わりにも利用されていました。
「ヤロウ」の使い方の例
精神の安定に
「ヤロウ」には鎮静作用と共に強壮作用があり、気持ちの安寧に役立つ精油です。感情の起伏が激しい方には特にお勧めできる香りです。イライラや怒りがこみあげている時には落ち着きを、気落ちした時や、悲壮感に苛まれる時には上向きの心を回復させる手伝いができます。身の回りに香りを漂わせて少しゆっくりした時間を過ごしてください。
体を楽にする
優れた鎮痛作用があり、血流やリンパの流れを滑らかにする効果もあります。その為、腰痛や肩こり、神経痛など身体に起こる様々な痛みを取り除いてくれます。殺菌作用や強壮の効果もあるので、免疫力を向上させて感染症の予防も期待できます。また、女性ホルモンのバランスを整えてくれるので、鎮痛作用や血行を促進する効果と相まって月経痛の緩和にも役立ちます。
皮膚の手当に
「ヤロウ」は、古来より傷薬として利用されてきた薬草です。精油にもその効果があり、軽度の火傷や湿疹、虫刺されなどの手当に使えます。「ヤロウ」精油の青い色を出している成分のカマズレンには、抗炎症作用だけでなく抗アレルギー作用や痒みを抑える効果などがあります。お湯に精油を1,2滴入れ、タオルなどに含ませて患部を湿布する方法や軟膏を作って手当するとよいでしょう。
「ヤロウ」を使用する時の注意点
使用に関して注意しなければならない方
妊娠中の方
子宮に対する収れん作用があるので、大量に使用すると流産などの危険性があります。
てんかん患者の方
神経毒に似た成分が含まれているので使用しないでください。
キク科アレルギーの方
ブタクサや他のキク科の植物にアレルギーのある方は使用を控えてください。
刺激が強い
強い精油ですので少量でも効果はあります。一度に多くの精油を使ったり長時間利用したりすると頭痛を引き起こす可能性があります。また、幼児に使うのも控えてください。
「ヤロウ」のまとめ
「ヤロウ」には「兵士の傷薬」と言う呼び方がありました。学名にあるアキレアはギリシャ神話の英雄アキレスに由来します。トロイ戦争で傷ついた兵士を手当するのに使った薬草が「ヤロウ」だったと伝えられています。ヨーロッパでは古くから栽培もされて、切り傷や火傷の手当に使う軟膏を作っていました。とても良い効能のある薬草で、芳香もあることから中世ヨーロッパでは悪魔を寄せ付けないと信じられていました。大航海時代に世界の様々な所に持ち込まれ、現在ではアメリカ大陸やオーストラリアでも帰化植物として自生しています。有史以前から利用されていた「ヤロウ」は、悠久の時を経ても変わらない効果のある植物と言えるのではないでしょうか。