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行動・心理症状とその支援

画像や文章のほとんどが、認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)からの出典になります。

目次

行動・心理症状とその支援1

元気がなくなり、引っ込み思案になることがある

認知症の初期にうつ状態を示すことがありますが、原因には「もの忘れなど認知機能の低下を自覚し、将来を悲観してうつ状態になる」という考え方と、「元気や、やる気がでないこと自体が脳の細胞が死んでしまった結果である」という考え方があります。

自信を失い、すべてが面倒に

認知症の症状が出てくると、周囲が気づく前から、本人は漠然と気がついています。これまでテキパキできた料理も手順が悪く、時間がかかるうえに、うまくできなくなります。苦労して作っても、「これまでと味が違う」等といわれ自信を失います。

客が来たら出前をとることになり、日頃の食事も出来合いのお惣菜ですますようになります。家の整理、整頓や掃除も同じです。片づけるつもりが散らかって収拾がつかなくなり、室内はごちゃごちゃ、大事なものはどこかに行ってしまうことになります。

意欲や気力が減退したように見えるので、うつ病とよく間違えられます。周囲からだらしなくなったと思われることもあるようです。すべてが面倒で、以前はおもしろかったことでも、興味がわかないと感じる場合も多いようです。

将来の望みを失ってうつ状態になる場合も能力の低下を強く自覚し、密かに認知症に関する本で調べたりしている人もいます。そして自ら認知症を疑って将来に望みをなくし、うつ状態になることもあります。

行動・心理症状とその支援2

周囲の対応としては、本人に恥をかかせないようにすることが大事です。「できることをやってもらう」ことは必要ですが、できたはずのことができなくなるという経験をさせ、本人の自信をなくすという結果になったのでは逆効果です。自分の能力が低下してしまったことを再認識させるようなことはますます自信を失わせます。

例えば、昔、書道がうまかったからといって書道を強要すると、本人にとってはヘタになった文字を見るのは辛いと考えることもあるのです。

それとなく手助けをして成功体験に結びつけることができれば少しでも笑顔が戻るようになるでしょう。うつ状態にあるときには周囲からの「がんばれ」が負担になるので注意が必要です。

 

行動・心理症状とその支援3

周辺の人が疲弊する精神症状

しまい忘れから、もの盗られ妄想へ

幻覚、妄想、抑うつ、夜間せん妄などの精神症状についてどう理解したらいいでしょう。なくしたものを盗まれたと思いこむ、もの盗られ妄想を例に考えてみましょう。

大事なものをしまい忘れるのは認知症の人なら多くの人に起こる中核症状です。いつものしまい場所ではなく、違う場所にしまいこみ、すっかり忘れたために「通帳がなくなった!!」と始まります。人に頼らず、自立して生きていきたいという気持ちの強い人では、自分が忘れるわけなどない(忘れたなどということが受け入れられない)と思うあまり、そばで世話をしてくれている人が盗んだというもの盗られ妄想がしばしばみられます。

これは、もの忘れという中核症状に、自立心が強いという性格や、心ならずも家族に迷惑をかけているという状況が影響して起こる行動・心理症状です。なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですから、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう心理的な支援をすることが大事です。こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。

もの盗られ妄想がより複雑な妄想になることも

妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「嫁は家の財産をねらっている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。

これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与しているので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。

単純なもの盗られ妄想にしては訴えがオーバーだったり執拗だったりするときは、妄想の対象となっている人を守るためにも、本人の症状を軽減するためにも、認知症をよく理解している専門医に相談することが重要です。

行動・心理症状とその支援4

行動障害への理解

「徘徊」のことばを止めて原因を考えてみる

自分のことや周囲で起こっていることが正しく把握できなくなると、行動がちぐはぐになり、日常生活にも支障が出てきます。「徘徊」を例に原因を探ってみます。

(1) 図書館で数時間過ごすのが日課のAさん。ある冬の日、いつもより2時間遅く出かけたため、暗くなった帰り路、道に迷い夜遅く疲れ果てた姿で自宅に戻ってきた。

(2) Bさんは、日曜日の朝、通っている教会に行こうと自宅を出たが、迷子になり、昼過ぎ、とぼとぼと家に戻った。

(3) Cさんは、夕方になると、遠くの郷里に帰ると言ってたびたび家を出て行こうとするが、ある日、介護者が目を離した隙に出て行き、行方不明になり、翌日、思いがけない場所で保護された。

(4) Dさんは、妻と買い物の途中、行方不明になった。2日後に遠く離れた町で保護された。

(5) Eさんは、家の中でも外でも、じっとしていないで歩き続ける。人や物を押しのけ、突き飛ばしてとにかく歩く。

(1)(2)の場合は場所の見当識障害が原因です。Aさんは昼間、風景が見えれば大丈夫なので明るいうちに帰れるように工夫すれば一人で活動できます。Bさんはもう少し症状が進んでおり、送り迎えのボランティアが必要かも知れません。

(3)のCさんの症状は、脳の活性が徐々に下がってくる夕方に、場所や時間の見当識障害が深まるようです。昼寝などで夕方の意識をはっきりさせ、場合によっては薬を使います。

(4)のDさん、(5)のEさんの場合は、認知症が進行して常に誰かが見ていないといけません。介護者の支援が必要です。「徘徊」といってしまえば終わりですが、原因を想像すれば対応策も自然にでてきます。

画像や文章の出典元:認知症サポーター養成講座標準教材(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク 全国キャラバンメイト連絡協議会作成)

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