サイプレス（Cypress）

「サイプレス」のご紹介

　「サイプレス」の名前を知らない人でも糸杉と言えば聞き覚えのある人は多いのではないでしょうか。美しい並木道の写真などで見られるほっそりとした樹木で街路樹や公園樹として好んで植えられている木です。

「サイプレス」は、どんな植物？

　「サイプレス」は糸杉のことで、他にも西洋ヒノキとも呼ばれている樹木です。ヒノキ科に属し、樹高は20～30ｍにも及びます。和名で糸杉と呼ばれていますが、杉と言うよりヒノキに近く、葉もヒノキのように細く丸い糸の様で、杉のように棘状ではありません。枝は短く、横に張り出さないのでほっそりとした見かけの木になります。成長は早いのですが、根が浅いので風に弱く強風で倒れてしまうことがよくあります。木材としての価値は高く、腐敗しにくい性質から家具や建材、船の材料としても利用されています。また、ギターを作る材料として欠かせない木材でもあります。綺麗な円錐形に育つので、園芸用に樹高が高くならないよう品種改良されたものもあります。

「サイプレス」の主な産地

　針葉樹のイメージとしては寒冷地でも強く育成する印象がありますが、「サイプレス」は耐寒性があまりありません。原産は地中海沿岸や西アジアの温帯域と言われています。ギリシャ神話にも出てくる糸杉ですが、「サイプレス」を語源とする島が地中海に浮かんでいます。地中海の東の端にあるキプロスと言う名のこの島には、古来より糸杉がたくさん生えていたそうです。地中海にある島の中で3番目に大きな島で、島の面積の約2割が山間部となり、糸杉をはじめマツやプラタナスなどの樹々が美しい森を作り出しています。

「サイプレス」の香りと特徴

　「サイプレス」精油は、新しい木材の香りを高め凝縮したような透明感のあるスッキリとした香りがあります。糸杉の実と葉を新鮮なうちに水蒸気蒸留法で精油を抽出しています。実は、ヒノキの実に似ていますが、ヒノキより大きく2～3㎝の球形です。種子を守る果鱗（かりん）が小さなサッカーボールのように見えます。熟すまでにおよそ2年かかり、球果が乾燥するとよく見る松かさの様に果鱗が開き種子がこぼれ落ちます。

「サイプレス」の使い方の例

冷静さを求められる時に

　「サイプレス」には針葉樹に含まれるセドロールと言う成分が多く、ゆっくりとした深い呼吸を促すことが期待できます。考えがまとまらず気持ちが落ち着かない時や、喜怒哀楽の感情が激しい時などに「サイプレス」の香りを嗅ぐと自然に落ち着いた気持ちになれます。また、寝つきを良くして穏やかな睡眠に導く手助けもできます。

女性に特有の不快感を軽減

　更年期や月経時の不快感や身体の不都合を軽くしてくれる効果があります。むくみやのぼせなどを軽減してくれて、その上「サイプレス」の香りはそれらから来る不快感を取り除いてくれます。入浴剤としてバスソルトなどで活用してみてはいかがでしょうか。

呼吸器のケア

　アロマディフューザーやアロマランプでお部屋に香りを広げることで、空気を浄化できます。咳や気管支炎でのどに炎症がある時には、湿布やカップにお湯を入れ立ち上る蒸気をゆっくりと吸い込む吸入でケアしてください。

「サイプレス」を使用する時の注意点

鮮度が大事です

　「サイプレス」を含む針葉樹の精油は揮発しやすい性質を持っています。また、光や熱によって劣化しやすい事も知られています。精油が劣化すると香りが逃げたり、悪くなったりします。肌にも悪い影響を及ぼすことがあるので、開封したら早めに使ってください。

女性ホルモンに影響があります

　収れん作用や女性ホルモンを刺激する成分が含まれています。乳がんや乳腺炎などのホルモンに関係する疾病のある方や妊娠中の方は、使用を控えるか専門家に相談してから使用してください。

皮膚刺激

　敏感肌の方など稀に皮膚に刺激を与えてしまう事があります。薄めて使う事をお勧めします。入浴剤として使う場合は、乳化剤や少量の植物油に混ぜて使用してください。肌に刺激を感じた時や赤くなった時などは使用を中止してください。

「サイプレス」のまとめ

　「サイプレス」には様々な逸話が残されています。イエス・キリストが磔にされた十字架は、糸杉から作られたものであるとの言い伝えがあります。ギリシャ神話では美少年が可愛がっていた鹿を誤って殺してしまったことから、永遠に嘆くために神々に願い、糸杉に姿を変えてもらったとされる話もあります。さらに、切り倒されると切り株からは芽を吹かず二度と再生しない樹木です。それらのことから死や悲しみの象徴とされて、神聖な木として墓地や教会、寺院に植えられています。しかし、種子からの育成は樹木としてはとても早く、また、切り倒されても腐敗が非常に遅い良質の木材として知られています。その結果、糸杉は死と悲しみだけでなく相反する生命や再生のシンボルともされています。